日本ビタミン学会

スプリットルシフェラーゼを用い、ビタミン D 受容体とコアクチベーター間の相互作用に基づいてビタミン D 受容体リガンドを検出する新しいバイオセンサーNovel biosensor using split-luciferase for detecting vitamin D receptor ligands based on the interaction between vitamin D receptor and coactivator.

著者名(英文):Hiroki Mano, Masashi Takano, Shinichi Ikushiro, Atsushi Kittaka, Toshiyuki Sakaki
掲載雑誌名:Biochemical and Biophysical Research Communications 505, 460-465 (2018). DOI :10.1016/j.bbrc.2018.09.122.

論文サマリー

1α,25-ジヒドロキシビタミン D3 [1α,25(OH)2D3]やその誘導体はビタミンD受容体(VDR)に結合し、カルシウムやリンの恒常性維持、細胞分化、免疫システムにおいて重要な複数の遺伝子の発現を調節する。これまでに数多くのビタミンD誘導体が、くる病や骨粗鬆症などの骨関連疾患や乾癬の治療を目的に合成・研究されているが、副作用が少なく、低用量で効果のある治療薬の開発を目指して、今なお、様々なビタミンD誘導体が開発され、その作用機序や効能についての研究が続けられている。特に、ビタミンD誘導体のVDR結合能の評価は、必要不可欠である。我々は、分割型ルシフェラーゼの技術を用いて、ビタミンD誘導体とVDRの結合を発光増加として検出可能なビタミンDバイオセンサーを開発した。先行研究において、ビタミンD誘導体の一つであるAH-1は、遺伝性抵抗性II型くる病患者由来のR274L変異型VDRに対して、高い親和性を有することが明らかになり、また、ビタミンD代謝酵素であるCYP24A1によって(24R-OH)AH-1および(24S-OH)AH-1に代謝されることも明らかになっている。そこで、AH-1およびAH-1の主要代謝産物である(24R-OH)AH-1および(24S-OH)AH-1の野生型VDRおよびR274L変異型VDR結合能について、ビタミンDバイオセンサーを用いて比較を行った(図)。野生型ビタミンDバイオセンサーでは、いずれの化合物においても、濃度依存的に発光が増加したが、AH-1, (24R-OH)AH-1および(24S-OH)AH-1は、1α,25(OH)2D3よりも親和性が低いことが示された。一方、R274L変異型ビタミンDバイオセンサーでは、AH-1は1α,25(OH)2D3の20分の1程度の濃度で発光が増加したことから、R274L変異型VDRに対して高い親和性を持つことが示された。また、AH-1の代謝産物である(24R-OH)AH-1および(24S-OH)AH-1は、1α,25(OH)2D3と同程度の親和性を保持していることが明らかになったことから、AH-1は、R274L変異型VDR由来のくる病患者の治療薬となる可能性があり、リード化合物として期待される。

 

グラフィックサマリー

解説者コメント

分割型ルシフェラーゼ法を用いて、VDRリガンドを簡便かつ迅速に検出・評価可能なビタミンDバイオセンサーの開発に注力してきました。ビタミンDバイオセンサーを改良することで、遺伝性抵抗性II型くる病の症状改善に効果のあるビタミンD誘導体の同定にも成功しました。将来的には、ビタミンDバイオセンサーを用いたビタミンDやビタミンD誘導体の生体イメージングへの発展を視野に研究を行っていきたいと考えています。

 

解説者:真野 寛生(富山県立大学生物工学科機能性食品工学)

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